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長寿命化を担う専門家育成を◇インタビュー 小野東京コンクリート診断士会会長

 インフラとしてコンクリート構造物は、100億㎥におよぶストックを抱えている。東京コンクリート診断士会の小野定会長(東京都)は「厳しい財政と、少子化、さらに環境負荷の軽減という難しい状況下でそれらをすべて更新することは難しい。コンクリート構造物を維持する上で、継続的に維持・補修をする長寿命化が欠かせない」と訴える。

 コンクリートは鉄骨に比べて安く、現地で資材を調達しやすいうえ、自由度が高いため近代では非常に多く使用されてきた。今後もコンクリートがインフラの主材となることは変わらない。
 一方で高度経済成長期に作られた膨大なインフラの老朽化が進み、更新の時期を迎える。厳しい財政状況の中でこれらを維持管理、更新をしていくことは負担が大きく、新設投資を制約することになると推測されている。少子高齢化によるエンジニア数の減少に加え、環境負荷の低減も求められている状況下で、社会基盤を維持するためには、今ある構造物を適切に維持管理する「長寿命化」を図る必要がある。

◇インフラメンテの重要性

 コンクリートは塩害、凍害、化学反応などさまざまな要因で劣化するが、定期的にメンテナンスを行うことで、寿命を延ばすことができる。劣化が進行しないうちに補修を行えば、メンテナンスコストを低く抑えることができる。近年発生した笹子トンネルの天井板が崩落した事故も、基本的な構造物のメンテナンスが行われていなかったため発生した。同様の構造を持ったトンネルの補強検討業務に携わったことがあるが、適切な処置を講じることで事故を未然に防げていた可能性はある。構造物の健全性を定期的に適切な点検・調査に基づいて診断し、合理的な補修補強を行うことが重要だ。

◇ポイントは技術者の専門性

 コンクリートがインフラの主役である以上、技術者は今後、打設においても維持補修においても長寿命化の観点と専門性を持って取り組まなければならない。
 調査・点検、診断、補修の一連の流れの中で最も重要なのは診断。例えばひび割れが発生したコンクリート構造物があるとして、ひび割れがどのような要因で発生したかを見極めるためには、現場で調査することはもちろん、施工時の打設や現場の状況まで、プロセスをさかのぼって調べる必要がある。
 現状だけにとらわれると正しい診断はできないし、正確な判断なしに適切な補修方法を提案することはできない。打設時においても、長期的な視野で劣化要因を想定し、対応できる構造にしなければならない。隅田川の水門の門柱を調査したことがあるが、しっかりコンクリを打ってあったため、50年以上経ったいまでも深刻な劣化は生じていなかった。コンクリートの専門的な知識は長寿命化に関わるものには必須といえる。

◇専門家としてのコンクリート診断士

 コンクリートの長寿命化を担う人材として維持管理の知識と技術、倫理観を保有していると認められたものがコンクリート診断士だ。公共事業においても公的な評価を受け、注目を浴びている。東京コンクリート診断士会のメンバーの間でも維持補修に関わる業務が増えていると聞く。
 一番訴えたいのは、資格取得を目指す人には「コンクリートの専門家」であるという自負と気概をもってほしいということだ。資格取得にあたり、調査や診断に携わる人は、正しい診断をするためにコンクリート構造物がどのように作られたか、過去の事例を学ばなければならない。それは技術者にとって大きな知識となる。
 また、新設や維持補修工事に携わる人は、多くの事例を学ぶことで新設・補修工事の場面で専門家として留意しなければならない事に気付くことができる。
 コンクリート構造物に関わる企業や技術者にはぜひ資格を取得し、長寿命化を担う専門家として社会に貢献してほしい。(談)

◇コンクリート診断士養成セミナー ~受験必勝講座~

 新建新聞社は長野県コンクリート診断士会と共催でコンクリート診断士の資格取得を目指す技術者をサポートする受験対策講座を2月22日・23日の2日間、松筑建設会館(松本市)で開催します。東京コンクリート診断士会からコンクリート診断のスペシャリスト3講師を招き、試験合格に必要な知識と勉強法を伝えます。

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