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ICT工事は割に合わない?【第2弾】――通常の建機で「無人化施工」◆直営施工で技術力を蓄積

i-Constructionの本質は生産性の向上だ。単に「ICT活用」というものではない。だからこそ今、中央の画一的な手法ではなく、地方の建設企業ならではの取り組みに注目が集まっている。長野県内における、地方建設企業ならではの挑戦を追うシリーズ企画。

 小谷村の鷲澤建設(鷲澤尊社長)は、今年新たに導入した無線遠隔操縦ロボットを使った無人化施工に取り組んでいる。
 実施しているのは、国土交通省松本砂防事務所発注の流路護岸工事(小谷村・浦川)で、同社の直営による無人化施工は今回が初めて。斜面の崩壊や、上流部での土石流発生の危険性のある現場だ。
 無人化施工に取り組む理由を、同社の鷲澤社長は「当社の所属する地域は、山腹崩壊や土石流が頻発する危険な現場が多い。また災害が発生した際には復旧に出向く必要もある。そうした現場において、作業者の安全を確保することは不可欠だからだ」と説明する。
 これは現場の安全対策というだけではない。「直営による無人化施工の技術を蓄積することで、こうした現場に安全に対応することができれば、当社の新たな武器になる」と鷲澤社長はいう。つまり、地域性にあった高い技術力を自社に装備することで、競争力を高める狙いもある。

◆専用建機ではなく無線ロボット使用

 同社が無人化施工で選んだツールは、コーワテック(東京都)製の「アクティブロボSAM」という空気圧を利用した汎用型無線ロボット。無人化のための専用建機ではなく、通常の建機の運転席に搭載する「無線ロボット」で、AIではなく人間が操作する。
 現在施工中の現場では、この無線ロボットを操縦席に搭載したバックホウやクローラーダンプを使い、工事を行っている。
 無線ロボットのメリットは、高額な専用建機が要らない点と、オペレーターとロボットを持参するだけでどの現場でも無人化が可能になる点にある。ロボットの導入コストは「専用建機とさほど変わらない」(鷲澤社長)というが、ロボットであれば建機の性能が古くなったら建機だけを買い替えれば良く、また通常の建機がある現場にロボットを運ぶだけで無人化施工が可能になる。運転席に搭載する時間は30分ほど。更新のコストと輸送コストを考えれば、十分に元が取れるというのが同社の考えだ。

◆試運転と要望で技術とノウハウ蓄積

 もちろん、導入してすぐ成果が出たわけではない。同現場の代理人を担当し、社内の無人化施工プロジェクトのリーダーを務める宮沢政昭さんによれば「昨年から試運転を重ね、今年ようやく現場で実践できるレベルにまでなった」という。
 だが、試運転を重ね、メーカーに要望をフィードバックするなどした結果、今では「従来の専用建機に比べタイムラグはあるが、操作性は格段に向上した」と宮沢さんはいう。「今後は本現場での経験を技術者間で共有し、技術向上に役立てたい」とし、現場サイドからも会社が進める無人化施工への挑戦を後押ししていくつもりだ。

◆「誰でも操作できる体制目指したい」

 建設業は地域性があり、個々の企業ごとにも違いがある。画一的な標準化や、中央のトップランナーの事例を追うことだけが正解ではないことは、本紙の前号でも書いたとおり。自社の地域、業態、規模などに最適な方法は何かを考え、実践する必要がある。専用建機でもAIでもなく、「無線ロボット」が同社の選択だ。
 鷲澤社長は今後について「現場の社員が誰でも無線ロボットで建機を操作できる体制を目指したい」という。急峻な山地である小谷村の、スーパーゼネコンではない地方建設企業だからこその挑戦が続いている。[新建新聞10月25日号抜粋]

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