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県内大工10年以内に急減 ~建設労連組合員 半数が60歳以上~

■「第10次職能開発計画」で育成ビジョンを

 県は今年度「第10次長野県職業能力開発計画」を策定する。生産年齢人口の減少を背景に、今後の人材育成・活用の方向と具体施策を示すもの。5月30日に開いた県職業能力開発審議会(委員長:半田志郎信州大学工学部長)では「生産性向上に向けた人材育成の強化」「全員参加実現に向けた多様な能力開発支援」などを柱とする答申素案について意見交換した。

 人材の育成・活用は全産業の課題だが、なかでも建設業は大幅な人手不足が予測され、とくに技能者の高齢化は深刻な状況。労働力確保に向けた取り組みが各方面で進むが、それらが県全体の施策にどう位置づけられるかも注目したい。今後パブリックコメントを経て、7月には計画の答申案をまとめる予定だ。


 厚生労働省の雇用政策研究会が昨年まとめた推計によると、経済成長がなく高齢者や女性の活用が進まないと、全国の就業者数は2030年に5561万人となり、2014年比で12.4%、790万人減る。

 うち長野県は15.6%、17万1000人減少する見通しで、全国平均を3.2ポイント上まわる減少率。なかでも鉱業・建設業は生産年齢人口の減少がダイレクトに影響し、経済成長と高齢者・女性の活用が適切に進んだとしても19.8%、1.8万人の減少が見込まれている。

 第10次長野県職業能力開発計画の答申素案は人口減少を背景に、個々の能力アップや全員参加の支援による労働力の質的・量的向上を重点化。地域ニーズに応じた能力開発機会の創出や公共職業訓練による多様な就職支援で労働市場の活性化も図るとし、技能の振興も基本的視点に位置付けている。

 これに対し5月30日に県庁内で開いた県職業能力開発審議会の席上、県建設労働組合連合会(県建設労連)の宮川信一書記長は「今後の産業構造の変化を具体的に見通したうえで、中長期的な人材ニーズを的確に把握し、全体の職業能力開発のあり方を検討してほしい」と訴えた。


■地域の雇用と防災の担い手

 県建設労連は県内の建設事業主や一人親方、職人ら約1万7400人で組織。組合員はピーク時の1997年度から17年連続で減り続け、なかでも約3割を占める大工の減少率は直近4年間で12.6%にのぼっている。

 県内の大工はこの30人年で半減し、2010年時点で約1万人。うち5200人が県建設労連に加入するが、急速な職人減少と若年不足・高齢化に歯止めがかからず年齢割合は60歳以上が実に55.1%に達した。 組合員大工は今後数年間で激減が避けられない状況だ。

 現在約90万戸の新築住宅市場が60万戸前後に縮小することが予想される一方で、膨大なストックの維持・活用、診断・改修には能力のある職人が欠かせない。公共分野でも、老朽化が進むインフラの維持管理、災害時の迅速な対応には技能労働者の力が不可欠だ。「担い手確保」は建設行政・業界あげての重要テーマだが、なかでも大工技能者の雇用・育成を担ってきた小さな工務店や一人親方が窮地にあると宮川書記長はいう。

 「住宅会社やゼネコンの多くはそうした技能者を外注化してきたが、今後は企業間での囲い込みや奪い合いが予想される。小さな工務店や一人親方は系列化にのみ込まれ、廃業も一層進む可能性が高い。そうしたなか、どういうビジョンを示して人材育成に取り組むのか。建築業界内だけでなく、地域防災ひいては県民生活にも関わる問題」


■取り組みの成果を現場に

 明るい兆しもある。一つは公共工事設計労務単価が4年連続で上昇し待遇改善の環境が整いつつあること。建設労連の2015年度賃金調査結果によると、全職種の平均賃金は1日1万3915円で前年度を1.4%下まわったが、雇用形態や現場によって上昇もみられた。

 たとえば常用・手間請大工の賃金は「工務店(町場)」「地元不動産の建売」「ゼネコン(野丁場)」の現場で上昇。一人親方大工の賃金も「工務店」の現場で上昇している。大工以外の職方は常用・手間請が「大手住宅会社」の現場で上昇、同じく一人親方が「工務店」「大手住宅会社」「ゼネコン」の現場で上昇した。

 改善効果は限定的だが、これを全技能労働者にいき渡らせるべく、建設労連では県が試行する「適正な労働賃金の支払を評価する総合評価落札方式」を注視していく構え。将来的には技能者の経験やスキルに見合った評価とそれに応じた処遇が望ましいとし、国土交通省が進める「建設キャリアアップシステム」の動きも注目する。技能者の資格や就業履歴を登録・蓄積、検索可能にし、評価の裏付けにするとともに現場の効率的管理にもつなげるもの。2017年4月登録申請開始、8月運用開始が予定されている。

 県の「木造建築担い手育成啓発事業」により、一般の若者に技能者をPRする活動もはじめる。上田市内の中学校に4人の大工を派遣し、木製椅子の組み立てやカンナ削りの実演・体験指導を実施。また「信州健康エコ住宅助成金」の選択項目で「若手大工を雇用・育成している工務店の住宅」が加算対象になることを周知し、積極的な活用を呼びかける。

 「この数年の間に技能労働者不足が深刻化するのは確実。それをどこで把握し、どうアクションを起こすかを具体的に示すべきときだ」と宮川書記長はいう。[新建新聞6月5日号1面抜粋]

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