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インフラPRいまが好機 ~北陸新幹線延伸から1年~

 長野にとって「第2の開業」となった北陸新幹線の金沢延伸から1年。直後に冬季五輪をひかえ県内のインフラがいっせいに整備された1998年当時と比べると、地域経済の押し上げ効果は力不足の感が否めない。アクションプラン「STEP21」を5年前に策定し計画的に開業にのぞんだ石川県とは準備時点で差がついた感もある。が、インフラ整備の効果は短期的・画一的な視点では計れない。この機を将来の地域づくりにどう生かすか。さまざまな試みがはじまっている。


■県民意識の変化をつかめ 生活実感からの効果発信

 北陸新幹線延伸後の善光寺御開帳は過去最高の参拝者数を更新。長野経済研究所によると7割が県外客で、関東からの来客比率が前回より減少する一方、新潟・北陸からの来客が2.9ポイント増えた。新幹線利用客の比率でみると、新潟・北陸からは33ポイント増加し、関東からも11.5ポイント増えている。


■県民・企業の目も変わりはじめている。

 同研究所が昨年12月~今年1月に県内消費者800人に行った調査(回答570人)では、84.8%の人が北陸の情報量が「増えた」と感じ、63.6%が北陸のイメージが「よくなった」と回答。北陸への旅行意識が「高まった」人は66.2%にのぼり、東北信地域では実に70%を超えている。

 同じく県内企業709社に同時期行った調査(回答365社)では、営業エリアを北陸まで拡大したところは全体で5.8%とわずか。だが、東北信地域の非製造業に限ると13.5%がエリアを拡大し、20.6%が北陸に対する取り組み強化を「既に実施」「検討中」と答えた。

 「現時点では北陸新幹線延伸の効果は限定的」と同研究所調査部長の小澤吉則さん。「だが、今後生活交流圏の拡大が期待できる。企業活動でも卸小売・サービス業などにのび代がある」と話す。長野-北陸間の扉が開いたことは間違いない。北陸・関西方面への継続的なPR、新幹線駅を核とした2次交通の整備の重要性を訴える。


■インフラ評価は長期で

 新幹線のようなインフラは、即効果があらわれるとは限らない。長岡大学教授の鯉江康正さんは「1970年の全国新幹線鉄道整備法制定以降に整備された東北・上越、北陸を含む整備新幹線線は、東海道・山陽新幹線とは時代背景も沿線状況も違う」と説く。

 「東海道・山陽新幹線は増加する交通需要に対応し供給体制を整備した。それ以降の新幹線はそうした要請に迫られたものではなく、交通条件の改善を生かし地域開発を行うことが主眼。つまり20年・30年先をみすえ地域はどうあるべきか、どう新幹線を有効活用していくか。そうした将来ビジョンをふまえた長期的視点で効果を評価すべき」

 そのため評価指標はさまざまだ。たとえば観光客の増加は、リピート、2地域居住、さらには移住のきっかけとしてみることも可能。加えて鯉江さんは、数字にあらわれない「来ないリピーター」に着目する。たとえば県産りんごのおいしさが記憶に残れば、再び長野に来られないまでも毎年購入してくれる可能性が高い。生産増に寄与するとともに、生産者ひいては地域の誇りにつながっていく。


■新視点のインフラ整備

 インフラ整備の評価指標には大きく、公共投資による直接的な需要創出や雇用誘発といったフロー効果と、長期にわたって経済社会活動に寄与するストック効果がある。「交通量や時短以外にも、住民が身近に感じる効果や生活向上につながる効果がある」と県技術管理室副主任専門指導員の坂口一俊さん。「それも直近ではなく長い目でみて波及効果が出るものをさまざまな角度で評価し、発信する動きが起こっている」と話す。

 たとえば松本市・塩尻市で70年来進められてきた奈良井川・田川・女鳥羽川・薄川の河川改修事業は、台風時の浸水戸数を減らしただけでなく地域住民の河川愛護意識を育んだ。周辺環境美化のボランティア参加者が現在、年間1万7000人にのぼっている。

 同様に1991年から東御市で行ってきた求女川の河川改修も、氾濫被害の解消とともに河川愛護団体の構成員を増やし、ホタルの数まで増加させた。1997年に整備が始まった木曽川右岸道路は供用開始後、国道19号の迂回路として機能し、事故や渋滞による住民生活への影響を最小限に抑えている。

 こうした多面的な効果に着目した「新しい社会資本整備」として、県は「地域戦略推進型公共事業」を実施中。地域の将来ビジョン策定から関わり、課題やニーズをくみ上げ、実現に向けた戦略をともに検討して必要な施策をパッケージ導入する。来年度は「諏訪湖を活かしたまちづくり」「観光地の歩道グレードアッププラン」に取り組む予定だ。

 前述の鯉江さんは「地域間競争も大事だが、本丸は人口の自然増。その意味でも地域が自らの魅力に気づき、身の丈に合ったビジョンを掲げ、そこにインフラ整備の効果を重ねていく視点が欠かせない」と強調。坂口さんは「行政主導ではうまくいかない。地元を引っ張るリーダー、やる気のある人が必要で、そうした提案の部分で建設産業の参画を期待したい」と話す。[新建新聞3月15日号抜粋]

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